信頼を得て繋がったご縁
ある朝、一通のメールが届いた。それは、お得意様からのお問い合わせだった。
「先日、弊社と関わりのある他社からマニュアル制作会社を紹介してもらえないだろうか、という相談を受けました。弊社としては貴社を紹介させていただきたいと考えておりますが、問題ないでしょうか?」
それは、願ってもないお申し出だった。お客様の心遣いに感謝するとともに、信頼関係を築けていることに喜びを感じる、とても感動した瞬間でもあった。
自社製品マニュアルに関する企画、構成、制作、必要に応じてコンサルティングまで一手に任せたいというのがお客様のニーズだった。 ご縁を繋いでいただき、私たちは新規のお客様を紹介していただくことになった。
「弊社は、基板への部品実装を行っております。部品実装装置は社内で使用しておりましたが、販売向けの装置の開発は初めてで、マニュアル制作の経験もありません。制作対応可能かご検討いただけるようでしたら、弊社工場に来ていただき、現物を見ながらお打ち合わせをさせていただけたらと考えております。」
私たち制作チームは、お客様のホームページにアクセスし、製品情報を確認した。自動はんだ付け装置――それは、高品質を保ちながらも省スペース・省コストを実現する画期的な装置だった。早速打ち合わせの日取りを決め、制作チーム3名でお客様の工場へ向かった。
課題を引き出し、「こたえ」を提案する
事前に支給していただいたデータや情報を基に、打ち合わせが行われた。話を伺ってみると、自社開発した自動はんだ付け装置を展示会で出展したことをきっかけに、業界でのニーズが高まったのだとか。目標としている市場販売の日程を基に組んだ制作スケジュールを提案し、核となる制作に関するヒアリングを進めた。
「開発担当者がマニュアルも担当しますが、マニュアル制作に関しては経験がありません。」
お客様が抱えている不安は、この一言に尽きていた。私たちは一つ一つ情報を引き出していった。
・製品の据付、取扱、保守といったすべての工程を網羅したマニュアルを冊子にしたい。保守マニュアルに関しては、社内資料が使えるため冊子の中に組み込んでほしい。
→お客様のご要望にも柔軟に対応したマニュアルの構成および目次構成を。
・制作ツールには疎く、使いこなせる人材がいない。
→今後製品の改訂があったとき、弊社で制作したマニュアルを基に貴社でアップデートしていきたい場合、馴染みのあるWordを、弊社に依頼いただける場合、マニュアルの構成を踏まえ、DTPとして編集しやすいInDesignを。
今だけではない、一つのマニュアルを長い目で見たときのことを視野に入れた提案も行った。
お客様とともに、末永く
制作に関するさまざまな意見交換や認識合わせを終え、初回の打ち合わせは幕を閉じた。 その後、工場内を案内していただき、自動はんだ付け装置やプリント基板実装作業を見学させていただいた。これから深く知ることになる機械を見ると、ますます好奇心が湧いた。次にここへ来るときは取材だ。現場に赴き、機械を知る。お客様に向き合い、情報を得る。ライティングだけではない私たちの仕事は、こうして始まる。
製品にマニュアルは付き物。とはいえ、開発者にとって、製品に付随するマニュアル制作が悩みの種であることは多い。そこに私たちが提供できる技術があり、提案できる「こたえ」があると信じて、これからもお客様に貢献し続けていきたい。